今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識
女性ホルモンとの関係
脂質代謝に対する女性ホルモンの影響
篠原 康一
1
1愛知医科大学産婦人科学講座
pp.958-964
発行日 2022年10月10日
Published Date 2022/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409210792
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●産婦人科医全体として心血管疾患の予防医学の観点からの認識は低いが,更年期を専門とする産婦人科医のほうが脂質管理に対する介入頻度が多い.産婦人科医全体として脂質への関心も改善していることを期待する.
●エストロゲンと脂質代謝 : 閉経後のトリグリセライド(TG)の増加により,small dense LDLは活性酸素に容易に酸化されやすい超悪玉のLDLになっている.閉経後は内臓脂肪型肥満が増加するため,内臓脂肪の蓄積に伴い分泌された遊離脂肪酸は門脈から肝臓に流入し,肝内でのTG合成を亢進してVLDL分泌を増加させる.したがって,閉経後のTG上昇は内臓脂肪の増加と関連する可能性がある.
●閉経後脂質異常症に対するエストロゲンによる治療 : 更年期症状がある場合にはホルモン補充療法(HRT)が適応となるので,HRTの禁忌でない症例には生活習慣の改善に加え,HRTの脂質代謝改善効果に期待して3〜6か月間施行する.「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」の管理目標値に到達していなければ,HRTにスタチンやフィブラート系薬などを追加する.経口・経皮・エストロゲンの種類や用量に注意が必要である.またHRTの薬剤選択にあたっては,薬剤の特徴を十分理解したうえで,年齢やHRTの目的および合併症を考慮して投与薬剤,投与量,投与ルートを決めることが重要である.
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