特集 保健所改革
保健所問題の経緯と課題
橋本 正己
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.210-216
発行日 1975年4月15日
Published Date 1975/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204981
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はじめに--その今日の段階
長年の論議と混迷と停滞の末に,保健所改革の課題は,漸く行政の日程として動きはじめようとしている.保健所改革の必要が関係者によって論議されるようになったのは,昭和30年前後のことであった.昭和20年代の末期は,国際情勢の激変と保守的反動,地方財政の窮迫等によって,保健所活動にとっては誠にきびしい時期であった.30年は,厚生白書と経済白書の戦後論争に象徴される戦後史の大きな転換期であり,またおよそこの時期を境として,保健問題そのものにも急激に質的な変化が進んだことは周知のとおりである.
昭和30年代,とくにその後半は,高度経済成長政策によって,かってない社会経済的な変動が,急激かつ無統制に進んだ時期である.いわゆる人口革命が進行し,国民の傷病像死亡像には質的変化が顕著となり,エネルギー革命と重化学工業化による環境汚染の激化等により,地域の特牲が住民の保健に鋭く反映するようになった.
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