特集 医療に求められるイノベーション
医療のイノベーションと医療保険制度
遠藤 久夫
1
1学習院大学経済学部
pp.115-119
発行日 2008年2月1日
Published Date 2008/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101114
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あらゆる領域においてイノベーションが停滞することは,その直接的な受益者に不利益が生ずるのみならず,社会にとって資源配分上の非効率を生み出すことになる.医療においても例外でない.疾病構造の変化,医学の発展,国民の医療に対する価値観の変化,医療財政の悪化等々の環境変化に対して,イノベーションなくしては直面している課題の解決を図ることはできない.しかし,医療分野は一般的な産業と比較してイノベーションを起こしにくい状況がある.イノベーションは個々の組織が自発的に行うものであるから,活発なイノベーションが展開されるためには組織活動の自由度が高いことが前提となる.
しかし,医療には極めて多くの規制が存在するため,組織の自由度は大きく制約されているのである.それは,医療は生命や健康に直結しているため安全性の視点から薬事承認に代表される事前規制が多いことと,医療へのアクセスが所得の多寡によって不平等になってはいけないという公平性の視点からの規制が課せられているためである.医療分野における規制体系のあり方の是非は大いに議論されるべき課題であるが,現実問題として医療活動は制度依存性が極めて高いことは否定できない.そこで,本稿では経済的な意味で医療に大きな影響力を持つ医療保険制度とイノベーションの関係に着目する.
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