特集 家族
家族の人間関係
岡堂 哲雄
1
1聖路加看護大学
pp.236-243
発行日 1973年4月15日
Published Date 1973/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204649
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中核としての夫婦関係
人間生活は時代とともに変貌する.家族の人間関係も同じように,歴史的社会的状況の変動によって動揺する技術・文明の急速な進歩が,かつて存在した安定性のある家族の構造をおびやかし,その人間的機能を失わせつつある.
非行少年,登校拒否児あるいはなんらかの心理的問題を示す子どもたちの姿には,おおむね家族関係的精神病理の反映をみることができる.また,反抗もせず,学ぶこともせず,無気力で無感動な青年の群像は,アイデンティティ形成に不可欠な父親的模範の不在による精神的空虚を明示している.離婚率の漸増は,ことによったら故障した洗濯機を捨てると同じ心の仕組みが夫婦の間柄に入りこんだせいかもしれない.さらに,老人福祉に対する世間の主張が声高くなされる背景には,先祖とのタテの連結を放棄した世代の罪責感の投影があるのではなかろうか.
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