特集 法改正の動向
保安処分に反対し あくまで個をまもりぬく思想の確立を!
岡田 靖雄
pp.483-484
発行日 1972年8月15日
Published Date 1972/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204519
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わたしの保安処分制度反対の理由は,いくつかのところにかいています(岡田:"差別の論理--魔女裁判から保安処分へ--",勁草書房,1972年;岡田,"刑法改正の問題点",東京大学新聞,1972年1月31日第905号,同2月14日第907号)ので,ここでは要点だけのべます--
第1に,精神障害と犯罪とのあいだに直接の関係はなく,したがって,犯罪相当行為のあった精神障害患者に治療をくわえることによって犯罪の防止をはかろうとする保安処分制度の考え方は,問題のすりかえにすぎないのです(精神衛生実態調査による一般人口の精神障害有病率1.3%,精神病は0.6%にたいし,刑法犯検挙人数中の精神障害患者は1%前後,精神病患者は0.1%以下).そして,常習犯や浮浪者にたいしては人権保護上問題があるとされる保安処分を,精神障害患者にやってもよいとすることは,あきらかに,精神障害患者にたいする差別にほかなりません.
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