特集 法改正の動向
保安処分—歪められた公衆衛生活動の象徴
桑原 治雄
1,2
1京都大学医学部公衆衛生学教室
2三重県立高茶屋病院
pp.485-488
発行日 1972年8月15日
Published Date 1972/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204520
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刑法を全面改正する作業は昭和38年5月以来,法制審議会刑事特別部会(小野清一郎会長)で進められていたが,昭和46年11月29日の同部会の全体会議で正式決定され,現在法制審議会総会で検討されているものです.今回の改正の最大の課題とされたのは保安処分の新設で,それだけにこれを審議してきた小委員会の中でもA案とB案が提出され,なかなか一本にまとまらず,意見の対立はついに委員の辞任まで出るようになっています.
最終的にはA案にまとめたわけですが,犯人のすでに行なった行為が主たる根拠になるのではなく,将来の危険性が根拠となるものです.「精神障害者およびその疑いのある者で将来,罪を犯す惧れのある者」を社会の安全を保つために,裁判官の判断で法務省管轄の施設へ精神障害者の治療の名目で強制的に隔離収容しようとするものです.将来の危険性の予測については,保安処分に賛成している精神科医でも,精神障害者には犯罪者は多くない,再犯予測は今のところできないことを認めています.
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