研究
農村婦人の貧血に関する研究
内田 昭夫
1
,
藤堂 三男
1
,
小倉 敬一
1
,
内田 ふき
1
,
金子 勇
1
,
伊東 重成
1
,
柳沢 利喜雄
1
1千葉大医学部農山村医学研究施設
pp.152-159
発行日 1970年3月15日
Published Date 1970/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204040
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はしがき
わが国の高度経済成長施策に促されて,最近10余年間におこった農村の変貌は著しいものがある.生産構造の多角化,協業化などの変化,労働手段の機械化や農薬普及による省力化によって,労働の範囲は拡大し,強度が平準化されてきた.一方兼業化はあとつぎ,戸主にまで及び,男子労働力の離農流出は深刻なまでに進んで,主婦労働力は従来の補助的役割から農業の根幹労働力として比重が高まってきている.この急速の変化に伴う歪みはいまだ主体的に生きることのない主婦たちの肩にのしかかり,家事労働時間,生理的時間,自由時間を圧迫している.勢い過重労働におちいって,疲労や農夫症の多発が問題となってきている.われわれは従来から,農村主婦の健康障害について,現状の調査や問題の指摘をくり返してきたが,1965年長野県の地方都市に隣接する一農山村で,普通の労働に従事する主婦の健康診断にさいして,全般に血色素量の低下を認めた.特に賃金労働の主婦に貧血傾向がみられ,また農業従事婦人では,冬農閑期に日雇の土木工事に従事したり,季節臨時工として工場の単純労働に従事するものは,その間家事に従事するものにくらべて貧血傾向が高いことを知った.
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