特集 保健・医療と公的責任
第9回社会医学研究会・主題報告と総括討議
主題報告(座長まとめ)
2 保健所の対住民サービスのありかた
吉田 克己
1
,
大橋 邦和
2
1三重大・公衆衛生
2名大・公衆衛生
pp.459-465
発行日 1968年11月15日
Published Date 1968/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203770
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
筆者らは,本研究会の演題8-13の発表と,演題1-13の総合討議の座長を担当し,以下に述べるのは,この演題8-13の発表内容と,1-13についての総括討議の内容であるが,この研究会では,研究会の行なわれる以前に,あらかじめ1つの論文(東田論文)が呈示され,それに基づいて発表討論が行なわれたので,この報告をまとめるに当たって,まずここに前出の論文要旨とその問題点を記してみたい。
この論文は,住民の保健と地方行政--特に保健所の役割--と題した,関西医大の東田敏夫氏によるものである。その主要点は,憲法の"健康で文化的な生活を営む権利"と地方自治法の"住民及び滞在者の安全,健康及び福祉を保持すること"からときおこして,このような法にふさわしい活動を,はたして国・県(保健所)・市町村はしているかについて,地方衛生行政の歴史に基づいて,その問題点を追っている。東田氏によれば,その史的回顧において,過去に地方行政は,産業資本の確立と独占化に結びついた,絶対主義官僚政府の中央集権政治権力の出先機関として飼いならされ,その惰性は,戦後の民主化をもってしても打ち破ることはできず,数多くの外的・内的努力にもかかわらず,中央集権,産業優先の住民不在の地方行政のまま今日に至っている。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.