特集 保健・医療と公的責任
第9回社会医学研究会・主題報告と総括討議
主題討議のための論文
1 住民の保健と地方行政—保健所の役割とその限界
東田 敏夫
1
1関西医大・公衆衛生
pp.440-447
発行日 1968年11月15日
Published Date 1968/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203766
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はじめに
憲法は,国民の生存権を保障するために,「国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めねばならない。」と規定し,また地方自治法は「地方公共の秩序を維持し,住民及び滞在者の安全・健康及び福祉を保持すること」は,地方自治体がその行政事務として処理すべきものとしている。すなわち,住民の福祉の保健は,住民がその政治へ直接的な関与の可能性が大きい地方自治体が,"地方自治の本旨にもとづいて"住民の要求にこたえておこなうべき行政事務であり,このことは民主的政治体制における原則でもある。
問題は,今日の都道府県―保健所,あるいは市町村が,はたして住民の"健康で文化的な最低限度の生活を営む権利"を保障するにふさわしい活動をしているか,また中央政府は,地方自治体が住民の生存権にもとづき要求する保健衛生事業が可能なように努めているかということである。
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