人とことば
長寿の研究に想う
近藤 正二
1
1東北大衛生学
pp.323
発行日 1968年9月15日
Published Date 1968/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203727
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健康長寿は万人の願いであるが,公衆衛生の目指すところも,結局は国民の健康長寿であろう。長寿といっても私は,少数の人の100歳突破というような英雄的長寿よりも,少なくとも70歳以上まで健康で働ける人が多くなることが大切だと思う。ところが,満70歳以上の長寿者が人口に対する率(長寿者率)をみると,日本はヨーロッパの文明諸国と比べて約半分である。平均寿命は戦前と比べて20年も伸びたが,それは主として戦前,非常に多かった乳幼児や青年の死亡が激減したためであって,長寿者は今も国際的にみて断然少ない。これはいうまでもなく,成人が70歳未満で多数死ぬからである。現在は特に胸卒中・ガン・心臓疾患による若死が多い。少なくとも70歳を越えてからならばやむを得ないかも知れないが,70歳未満の若死が多いのである。これでは一身一家の不幸だけでなく,国家社会の大損害でもある。この若死を減らすことが国の急務であると思う。
それには,これら疾患の早期発見治療が必要なことはいうまでもないが,私はできる限り未然に予防する根本策も必要だと思う。ところが今までの国の対策は,予防対策といいながら早期発見治療が主で,真の予防が手薄であった。最近ようやく真の予防にも着目されてきたのはよろこばしい。ところで真の予防にはまず疾患の原因を知ることが必要である。
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