随想 明日を担う公衆衛生
保健所の魅力
石館 敬三
1
1東京都日本橋保健所
pp.445
発行日 1966年8月15日
Published Date 1966/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203319
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毎年5月から7月にかけて保健所にインターンが実習にやってくる。この時期はオーバーにいえば,私にとっては梅雨よりも憂うつな季節である。というのは,実習を終えて帰っていくインターンの後姿をみて,十分に彼らをもてなし得なかった後悔や無力感に責められなかったことがないからである。このことは,私が何も責任を感じることはないのであるが,インターンより若干先輩の保健所の若い医師として残念なのである。これは保健所側にインターンを受入れ,指導,教育を行なう体制が極めて不十分なため,片手間の指導に終っているからである。現在は,職員の顔見世興行的講義でお茶をにごしている保健所が多いと聞く。これではインターンをして公衆衛生に背を向けさせることにのみ役立つのでないかと恐れる。しかしインターンの側にも問題がある。多くは保健所にインターン実習にくる以前に,すでに公衆衛生を疎外してかかっているように思う。インターン生に公衆衛生活動の現場から何かを汲みとろうとする積極的な姿勢が感じられないのも事実である。だからといって,指導が等閑にされてよいという理由にはならない。私は現在のような保健所のインターン実習は有害無益であるから廃止したほうがよいと思っている。やるとすれば,指導能力のある保健所を選んで小人数ずつ配置して,保健所のスタッフとして実務についてもらう。このほうがお互いのためによい。よく保健所に医師がはいらない理由が話題となる。
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