随想 明日を担う公衆衛生
保健所時代の楽しかった思い出
寺松 尚
1
1厚生省防疫課
pp.444
発行日 1966年8月15日
Published Date 1966/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203318
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私が大学を卒業したのが昭和35年で,人生最後の臨床経験となるであろうインターンを東京の片田舎の病院で終え,無事に国家試験をパスして,大阪府に奉職したのが昭和36年のことであるから,早や5年間が夢のように過ぎ去ってしまった。大学入試の時と,専門課程に進む時との2度まで法学部へ進みたいという私の夢は,父の反対で果たせなかった。けれども,畑は少し違うが,一応曲りなりにも念願の行政機関にはいることができたようだ。しかし,この5年間,大阪府から厚生省にはいり,周囲の状況は若干変わったが,何をしてきたか,何にもしてこなかったような気がしている。私自身はわりあい楽観主義者であり,のんきなところから余り苦しかった思い出もない。そこで,さて私が大阪府にはいり,公衆衛生行政の第一線機関である保健所の仕事についての楽しい思い出を話してみよう。とにかく右も左もわからないままインターンを終え,まっすぐに行政にはいったわけであるから,誰かたよれる人がほしかった。さいわい,私が配属された保健所では立派な所長や諸先輩に恵まれ,所長にとってはわがままで世話のやけるだだっ子であったと思うが,私にとっては寄らば大樹の蔭とやらで,大いに保健所での生活を楽しんだものであった。
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