随想 明日を担う公衆衛生
精神衛生2年生の回顧
鈴木 一男
1
1厚生省精神衛生課
pp.446
発行日 1966年8月15日
Published Date 1966/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203320
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精神衛生の仕事を担当してから,早いものでもう2年半ばかりになる。その間を今静かに回顧してみることも,読者諸氏には,何らかの参考になりはしないかと考えて,あえて筆をとった。
就任当時(昭和38年10月)は,わが国の在宅精神障害者の実態調査の集計が終わり,全精神障害者数が124万人と推計され,精神病の中でも脳器質性のものが半数以上も占めていることを知り,前回に行なったデータと比べて,かなり特徴的なことがわかって異常な興味と関心を覚えた。まずこの調査結果の勉強からスタートすることができたことは,私にとって,まことにラッキーなことであった。一方では,その頃,日木精神神経学会を中心に精神衛生法の改正問題がやかましく論議されていた。また,学会ばかりではなく,日本精神病院協会では検討委員会が設けられ,活発な意見が交されていた最中であった。就任早々の私に相ついで法改正の必要性についての陳情と示唆が舞い込んだ。まだ精神衛生法の内容もろくにわからない私に,矢つぎばやの強談判である。いささか,ヘキエキしたことを覚えている。こうなってはまごまごしているわけにはいかない。
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