人のことば
近代医学の"誤謬"
ガルドストン
pp.293
発行日 1966年6月15日
Published Date 1966/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203251
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文字通り驚くべき成果を近代医学が次々と立てつつある時に,近代医学が誤ったと主張するのは,求めて自己撞著をしているものともみられよう。奇蹟的な医学の発展を許している条件,環境こそ,何よりも社会医学の進歩を妨げるというのである。しかし,われわれの思考,考察の構成,医学の将来を検討すると,どうしても近代医学の勝利には危惧すべき条件が備わっているといわざるを得ないのである。問題が複雑になってくるのは,それら勝利の種々の議論の余地のないほどの現実性と,否定できない有効性の故である。種痘やジフテリア抗素,インシュリン,抗生物質等の勝利を誰が一体否定できよう。しかし,これらの勝利の偉大さを認めても,近代医学は誤っていると断定せざるを得ないのである。
近代医学が誤っているというのは,何もガンや本態性高血圧症,多発性硬化症を治療できないからではない。それが治療できたとしても,やはり誤っている。いかに奇蹟的な新薬ができ,また今に到るまで名声の残っているような勝利を再び得たとしても,近代医学の過誤の告発を示談にできないのである。では,いかにして勝利と過誤とを調停すればよいのか。偶然にも,この種の組合せは歴史上全く未知のものではない。ピールスの勝利といわれているのがある。(エピノルス王ピールスは多大の犠牲を払って辛勝した)しかし,それほど難しくとらないでも次のように説明できる。
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