連載 症候学メモ余滴・21
Nothnagel症候群の誤謬—後の人の思い込みが事実を曲げた
平山 惠造
1
1千葉大学
pp.856
発行日 1997年9月1日
Published Date 1997/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406901171
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Nothnagel症候群は少し気のきいた教科書や辞典には収載されており,症候群を特集する雑誌では恰好の項目として取り扱われている。しかしその内容の多くは誤りを含んでいる。どうしてそのような誤りが生じたのであろうか。こうした誤謬の多くは論文の孫引きによることが多い。
余談になるが「孫引き」を辞書で引くと「他の本に引用してある文句を無批判に引用すること。誤りの元となる。」とあり,誠に面白い。私が入局した頃は,「孫引きはいけない,必ず原著をみるように。」とよく教えられたものである。一般的にいって昨今はこうした風潮が頓に希薄になっているように思われる。機器で簡単に索引できる近年の登録された論文のみが引用の対象にされ勝ちである。これでは本当の学問,文化は育たない。
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