講座 地区診断—よりよい現場活動の展開のために・1【新連載】
健康問題(health needs)の発見技法に関する考察・1
田中 恒男
1
1東京大学医学部保健社会学教室
pp.344-348
発行日 1966年6月15日
Published Date 1966/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203268
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はじめに
あらゆる領域での公衆衛生活動をふりかえるとき,その前提となる健康問題の把握が,かなり便宜的にあつかわれたり,あるいは国家的行政的要請にもとづくものであったりする場面が多いことに気づく。これは現状においてほとんどの公衆衛生活動が行政を中核として展開されているため,やむをえないことかもしれないが,地域社会を中心とする所属成員が,真にその必要性を認識し,自主的に活動を展開してゆくためには,その社会自体の健康問題がどのようなものであり,そのいずれを重点的に指向すべきかについては,慎重な分析と検討が加えられなければならない。
しかしながら,健康問題をいかに発見すべきかの客観的,系統的な技法はまだ十分な形では整理されていない。いわば地域評価(あるいは事業場評価,学校評価など)とも称すべき方法調論は,きわめて混乱したまま,あるいは常識的に暗目裡の諒解事項として放置されている現状である。もちろん衛生統計的な方法,医療統計の活用などを始め,社会調査技法の応用もとかれてきたが,それらはいずれも併行的な記述に止り,その関連などについての考察が不十分であった。筆者も一部論じたことがあるが1)あらためてその具体的な活用法とその活用に際しての注意点,ならびに問題点の選択について私論を展開してみたい。
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