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この2,3年マネージメントに関する本がよく売れたようである.クラブ活動のマネージメントなど中高生向きの漫画本も見かけるくらいである.多くの人が組織運営に関心を持ち,その難しさを実感している証拠でしょう.私自身管理職の立場にある関係上,日々の仕事はまさに組織の運営・管理そのものであり,学術的な研究に直接係わる時間はほとんどないと言ってよい.しかしながら,国立保健医療科学院は平成24年度から「腎疾患」も含め,今までにも「健康危機管理」,「難病」のFunding Agencyとしての役割を果たしてきたこともあって,企画・評価を実施する際に,どうしても今後の研究のあり方について考える必要に迫られる.これら一連の作業はまた,いわば研究マネージメントのような仕事である.
マネージメントを円滑に進めるためには,どうしてもコーディネート能力が問われる.様々な意見が飛び交うなかを整理して,ひとつの方向にまとめることが要求されるわけだが,真っ向から対立する意見がある場合,調整に苦労することは言うまでもない.一見して相反する意見であっても,実は見ている角度が違う,あるいはレベルが違うだけであって,本質的な違いでないこともしばしばある.したがって調整者は角度・レベルを分別できることが重要であり,このことを発言者たちに理解してもらう工夫が必要である.また,発言者が議論を戦わせているうちに感情的になってしまった場合,調整者(議長)はそれに巻き込まれてはならない.そのためには調整者は個人的な好み,利益を捨てるつもりで臨まなければならない.一般に陥りやすい落とし穴は,表面的に調整できたことで満足し,本来目指す目的を見失うことである.すべての関係者は,真摯でありもっともな意見であっても,その目的を見失うと,総合すると好ましくない結果になってしまうことがある.これを「合成の誤謬」と言う.議論の調整ではないが,「合成の誤謬」について経験した例を一つ挙げてみたい.
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