人とことば
妄想
pp.117
発行日 1966年3月15日
Published Date 1966/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203203
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東京では都会改造の議論が盛んになっていて,アメリカのAとかBとかの何号町かにある,独逸人の謂うWolkenkrntzerのような家を建てたいと,ハイカラア連が云っていた。その時自分は「都会というものは,狭い地面に多く人が住むだけ人死が多い,殊に子供が多く死ぬる。今まで横に並んでいた家を,竪に積み畳ねるよりは,上水や下水でも改良するが好かろう」と云った,又建築に制裁を加えようとする委員が出来ていて,東京の家の軒の高さを一定して,整然たる外観の美を成そうと云っていた,,その時自分は「そんな兵隊の並んだような町は美しくは無い,強いて西洋風にしたいなら,寧ろ反対の軒の高さどころか,あらゆる建築の様式を一軒つつ別にさせて,エネチアの町のように参差錯落たる美観を造るようにでも心掛けたら好かろう」と云った。(中略)
Revue des Deax Mondesの主筆をしていた旧教徒Brunetiereが,科学の破産を説いてから,幾多の歳月を閲しても,科学はなかなか破産しない。凡ての人為のものの無常の中で,最も大きい未来を有しているものの一つは,矢張科学であろう。
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