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研究と報告
敏感関係妄想書の1例—敏感関係妄想と原始関係妄想との関連について
Ein Fall von sensitivem Beziehungswahn-Über den Zusammenhang zwischen sensitivem und primitivem Beziehungswahn
中田 修
1
O. Nakata
1
1東京医科歯科大学総合法医学研究施設
1General Institute of Legal Medicine, Tokyo Medical and Dental Univ., School of Med.
pp.537-541
発行日 1962年8月15日
Published Date 1962/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200464
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I.はじめに
私はずつと以前から,精神分裂病の妄想や幻覚が入院を契機として著しく消退する場合のまれでないことを経験し,そのような症例に強い関心をもつていたが,最近,興味ぶかい1症例に遭遇した。それは幻覚妄想状態を示す57才の女子であるが,その病像は人院すると早急に消失し,退院すると早晩出現するという現象をくりかえし,病像の出没が状況の変化に顕著に影響される。しかも,発病後7年以上を経過しているにもかかわらず,人格の荒廃は認められない。入院を5回くりかえし,外来治療を2カ所で受けているが,診断はまちまちで,敏感関係妄想,退行期精神病,抑うつ病,精神分裂病が疑われている。病像,経過などを検討した結果,それは敏感関係妄想に属すべきものと考えられる。敏感関係妄想についてはKretschmerの名著があり,わが国でも荻野の多数例にもとつく優れた研究があるので,いまさら症例報告の要はないかもしれない。しかし,Schneider, K. のごとく異論をいだく学者もある。また,この例は敏感関係妄想と原始関係妄想(Schneider, K.)との関連性について示唆するところがある。それから,この種の妄想性反応が実際にそうまれではないという私の臆測より,臨床の実際に参考になるところがあろう。
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