「精神医学」への手紙
Letter—皮膚寄生虫妄想(Dermatozoenwahn)は妄想知覚か?/Answer—レターにお答えして—皮膚寄生虫妄想には,妄想知覚と考えられる症状も存在することがある
立山 萬里
1
,
林 拓二
2
1東京都立医療技術短期大学
2愛知医科大学精神科
pp.560-561
発行日 1997年5月15日
Published Date 1997/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405904336
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初老期皮膚寄生虫妄想(präseniler Dermatozoenwahn)は,実際にはいないのに体(皮膚)に「虫が寄生している」と確信する単一症状性の妄想で,Ekbom1)によれば,①皮膚の異常知覚(?痒感やパレステジー)と②妄想性解釈から成り立っている。本例は,「虫」の標本として皮膚垢やゴミなどを集めて持参したり,「虫」と主張して図示したりする。このような視覚性の体験は,「皮膚寄生虫妄想」が強い時に,感情的に誘発された錯覚性誤認(Schneider, K)2)と解釈されるが,最近,林氏3)はこの体験を妄想知覚とみなしている。
Ekbomは本例に「幻覚,被害・関係念慮などの分裂病性症状はすべて欠けている」と述べており,もし「皮膚寄生虫妄想」例に妄想知覚がみられれば,Schneider流にいえば分裂病になるわけで,この初老期の妄想症にそれを当てはめることには,慎重でなければならない。
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