地域活動の中から 保健所と大学をむすぶ新しいきづな
公衆衛生学の中心は保健所であらねばならぬ—札幌医科大学の試み
金光 正次
1
1札幌医科大学衛生学
pp.546-547
発行日 1964年10月15日
Published Date 1964/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202898
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最近の保健所の事情をよく知らないので的はずれになるかもしれないが,保健所と大学との関係について私見を述べたい。
保健所が当面しているいろいろな問題のなかでいちばん切実なのは医師が足りないことではないかと思う。われわれにその補給を求められても,こちらも手不足だからなかなか応じにくく,これにはまったく当惑した。また数はそろっているが質の上で問題の多いところもあるらしい。ちょうど,そのころ厚生省の公衆衛生修学生制度が発足し私の大学からも5,6名が志望採用された。それで学生のときから刺激を与えれば将来の仕事に自覚を深めるだろうと考えて,市民の罹病調査をやらせた。大きい仕事のほうがはりあいもあるだろうと思って520世帯2,000名を1年間継続して訪問調査する計画をたてた。すこしむりかと思ったが,彼らは同級生や保健婦生徒を多数糾合して調査班をつくり,ついにこの仕事をやってのけた。また,このときのリーダーになった学生は,各大学の修学生に呼びかけて全国会議をひらく計画をたて,連絡などで大分苦労したらしいが曲りなりにも第1回の会合を実現した。このときの修学生からは1名の脱落者もなく,全員が各地の保健所で所長や課長などをつとめている。この経験から学生に情熱を燃やさせることが公衆衛生にすすむ者を生みだす根源であることを知った。しかしこの情熱を持続させるには卒業後の彼らの身柄をあずかる行政当局の協力がなければならない。
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