私はこう思う シンポジュウムをきいて
保健婦の質と量と所属
荻野 淑郎
1
1埼玉県加須保健所
pp.58-59
発行日 1964年1月15日
Published Date 1964/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202790
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現在,保健所が地区のニードに応えるべく活動を行なってゆく場合,その最前線に働らく職種として,最も重要なメンバーの一つは,保健婦である。そこでこの保健婦について考えてみると,ここにもその質と量との両面に亘る不足が明らかである。
まず質の点について考えてみよう。保健婦という資格取得のコースが同一でなかったため,その受けた教育課程,更には遡って,その課程に入る前段階までの基礎知識にかなりの差がみられる。個人的能力の多少の差は当然のこととしても,資格取得に至るコースの相異による質的の差は,量的不足と相俟って,保健婦が地区のニードに応える場合に問題となってくる。そしてこの質的不均衡を少なくするため,或いはより一層の質的向上を期途して行なうポストグラヂュエートの教育の際にも,上述の資格取得までのコースの相異による保健婦の能力の差が障害となっている,たとえば職場研修を行なう場合に,その対象としては,最下位のレベルに墓準を合わせなければならず,一方研修を受ける側も,内容を理解するのに時間を要することになる。勿論この資格取得コースの相異は,わが国の公衆衛生の歴史をみた場合,その成り立ちおよび歴史の浅さからみて,止むを得なかったものではあり,大方の識者の指摘と努力とによって,現在この問題は改善されつつある。
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