総説
ウイルス感染症の血清疫学における2,3の知見
金光 正次
1
1札幌医科大学衛生学教室
pp.524-528
発行日 1962年9月15日
Published Date 1962/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202568
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血清疫学とは1950年にPaulとRiordan1)が提唱したSerologic epidemiologyに対して私が与えた訳語であって,要約すれば血清抗体を指標として感染症の疫学を研究するものである。このような研究はそれ以前から諸種の疾患について行われているので,必ずしもPaulらの創意とはいえないが,感染症の疫学を理解する上に抗体の知識が重要なことを実証した功績は認むべきであろう。この方式の研究はMelnickら2)によって発展拡大され,現在では各種の感染性疾患の疫学的研究に広く応用されるようになった。感染症の研究に抗体測定を行うのは当然のことで,それをこと新しく血清疫学などと呼ぶことに批判的な人もあるかも知れない。抗体の知識がその疾患に関する在来の記述疫学の内容を補足するだけならば,その批判は正しい。これまで行われてきた血清疫学の研究の殆んどはこの類のものであったから,そのような批判を受けるのも尤もなことである。これはひとり血清疫学のみでなく,疫学の本質にも関係することのように思うので,それについて私が考えていることを簡単に述べたい。
時代の経過と共に疫学の研究範囲が拡大し,それに伴って疫学に対する考え方も変遷してきたが,諸分野の知識を有機的に統合し,これを高い次元から理解するという態度は変らない。
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