特集 母子衛生
僻地における母子衛生指導—行政の谷間と母子健康センター
菅原 恒有
1
1岩手県公衆衛生課
pp.498-502
発行日 1962年9月15日
Published Date 1962/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202559
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I.はじめに
昭和27年,本県で最初の児童福祉法による公立助産所が黒石村(現在水沢市)に設置されてから10年の歳月が流れた。事のおこりは,たしか昭和25年頃,当時の田波厚生省母子衛生課長(現科学技術参事官)から岩手県は乳児死亡率が高いがその対策の一つとして助産施設を作ってみてはどうか,施設分娩を通じて妊産婦乳幼児の保健指導をやってみてはどうか,若し希望するならば児童福祉法による助産施設の設置について補助金を交付してもよいという厚意ある助言を頂いた。しかし,母子衛生担当の筆者としては公立助産施設を運営した経験もなく,また因習の根強い岩手県の農村地帯で果して地域住民にアッピールして充分活用されるかどうか,或いはまた開業助産婦との摩擦が生じないかどうか等の心配の種は数々あったが,当時の斉藤衛生部長(現広島県衛生部長),鈴木公衆衛生課長(現岩手県厚生部長)両氏の強力な推進のお蔭で,黒石村立助産所が日の目を見ることになったわけである。本県ではその後昭和30年児童福祉法による助産施設の補助金が打切りになるまで,合計7カ所設置した。
その後昭和33年から助産施設に保健指導部門を附置した母子健康センターの構想が若松母子衛生課長,山中技官等の努力で実現されて以来,昭和36年までに6カ所の母子健康センターを設置し,37年度には2カ所の新設を予定している。
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