意見 母性保健の問題点--母子衛生大会から
母子衛生の問題点—行政の立場から
菅原 恒有
1
1岩手県厚生部衛生課
pp.8-9
発行日 1960年2月1日
Published Date 1960/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201846
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吾国の母子衛生は戦後目覚ましい発展を遂げ,乳児死亡率のごときは昭和33年出生1000対34.6という過去の最低率を示し昭和22年のそれと比較して半分以下になつたが,母性死亡は過去10数年間殆んど改善されていない状態である.また乳児死亡が吾国有史以来の最低率になつたとは云え欧米の文明国家に比較して今尚,中位国家群から脱け切れないという厳しい現実を眺めるならば吾国の母子衛生の進展は必ずしも順調とは云えないであろう.吾国の母子衛生を更に向上させるためにはその隘路を糺明すると共にその打開に努めなければならない.筆者は行政的な立場から母子衛生の隘路と思われる1,2の点について私見を述べてみたい.
母子衛生行政の基本である児童福祉法は,昭和22年に制定されその後数次の改正がなされ,最近更に身体障害児の育成医療,未熟児の養育医療等が加えられ益々その輝きを増しつつある.然し妊産婦,乳幼児の保健指導については他の衛生関係法律に比較して必ずしも適切なものとは考えられない.法によれば妊産婦,乳幼児の保健指導は都道府県知事の行う業務とされている.何故このような住民の健康管理的業務を知事が行わねばならないか.筆者には法制定の経緯は知るよしもないが,恐らく生活保護法と同様貧困者対策を強く打出したためではないかと推測される.また保健指導の費用は貧困者についてのみ公費負担を行うという趣旨もこれを裏付けるものであろう.
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