原著
農山村における高血圧集団検診の受診率と高血圧発見率
坂本 弘
1
,
滝川 寛
1
,
因田 与志男
1
,
杉浦 静子
1
1三重県立大学医学部衛生学教室
pp.304-306
発行日 1962年5月15日
Published Date 1962/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202526
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わが国における死因別死亡の動向は,終戦以来次第に変遷し,最近に至っては,中枢神経系血管損傷,悪性新氏物,心臓の疾患,老衰といった,いわゆる成人病によってその上位を独占され,結核その他の伝染性疾患による死亡は減少の一途をたどっている。それに伴って,公衆衛生学の分野にも当然のことながら,これら成人病に関する諸問題が,大きな研究テーマとして取り上げられるに至り,中でも,脳卒中,心臓疾患の主な原因疾患といわれる高血圧症にその注目が集められた。しかしながら,高血圧症は単一な原因で発病するものではなく,多要素性をその背後にひそめているものであり,特に農山村における環境要因の複雑さは,本症の疫学的究明を行なう上に非常な困難さを感ずるものである。地域社会における高血圧症の実態調査の方法として,まだ確立をみてはいないが,結核における集団検診と同様,一応の様式でscreeningが行なわれている。しかし,事業場で行なわれる場合と異なり,農山村では住民の協力と,調査者側の大いなる忍耐なしには,受診率の著しい低調という結果になり,高血圧症の実態把握という目的からみれば失敗に終わってしまう。高血圧症集団検診に関する調査,研究は数多くみられるが,大都分が低い受診率を報告している。しからば,この検診もれの人口中に高血圧患者はどのくらいいるものだろうか? ということが,今後集団検診を進めて行く上に重要な問題となって来るのである。
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