特集 保健行動
農山村における保健行動
佐藤 千春
1
1群馬県前橋保健所
pp.771-775
発行日 1977年11月15日
Published Date 1977/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205507
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I.疾病に対する農山村の民間の伝承
いまここに,群馬の農山村で行われた民間療法の一部を挙げてみよう.
〈大病の時〉くず屋根に登って,破風の方から名を呼ぶと生き返る.豆腐の四隅を切り,その隅豆腐を屋敷稲荷に上げると,悪い所が治る.〈安産〉産泰(さんたい)様に祈る.水天宮(すいてんぐう)のお札を切って呑ませる.〈暑気あたり〉胡瓜(きゆうり)の葉を塩で揉(も)んで足の平につける.大根おろしを頭にあてる.菅笠(すげがさ)を被せ,水をかける(笠から下に水が漏れると治る).蓼(たで)を塩で揉んで,足うらやこめかみにすり込む.〈風邪〉いり豆を紙に包んで三本辻に置く.ねぎ味噌を食う.〈イボ〉お盆に供えた茄子(なす)(または胡瓜)の馬で人に見られないようにイボを撫でる.イボの数だけ米粒に墨を塗り,紙に包んで柿の木の下に埋める.渡良瀬川の向こう岸にあるオボシ岩に溜った水に昼星が映っている,その水をつける.〈マメ〉足のマメのまわりを半分ずつ(豆のまわりを一回りしては駄目)アブラウンケンソワカと唱えながら,指で撫でる.石川五衛門と唱えながら撫で,アビランケンソワカと言って押す.〈たむし〉墨で鴫(しぎ)という字を幾度も書く.〈漆かぶれ〉ゴマをすってつける.〈火傷〉熊の油をつける.〈こう手〉男なら女の末子,女なら男の末子に紐で縛らせる.〈吹出物〉蝮(まむし)の皮で患部を撫でる.〈虫歯〉松の芯を噛ませ,かんだ所を釘で柱に打ちつける.
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