綜説
衛生行政研究序説(その2)
橋本 正己
1
1国立公衆衛生院 衛生行政学部
pp.265-275
発行日 1961年5月15日
Published Date 1961/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202402
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5.行政学等の方法論に学ぶもの
学問の水準が高まるためには方法論の検討がきわめて重要であることはいうまでもないが,その第1歩としては,従来の考え方の整理とその系譜づけが重要と考えられる。先に考察したように,衛生行政学は公衆衛生学の一分科であるとともに,一般行政学の一分科として位置づけられるものと考えられるのであるが,このような見地からすると今後の衛生行政研究にとつて,これらの母体となる学問の領域,とくに一般行政学における方法論ないしはその系譜づけを学びとることが,きわめて有益であると考えられる。現代行政学の発展過程および最近の動向については,すでに概観したところであるが,以上のような見地から,まず行政学における方法論とその系譜を概観することとしたい。
方法論的にみると,アメリカにおける行政学は,例えばGoodnowのComparative Law, 1893にひとつの典型がみられるように,19世紀末から20世紀の初頭にかけて,まず比較制度論にはじまり,行政の現実把握を目的とする行政調査に発展し,さらに1915年以降科学的管理法Scientific Management1)のこの領域への積極的な適用によつてその基礎が固められたものといえる。このようにして現代行政学のひとつの重要な系譜として,いわゆる技術的行政学が確立されたのであるが,まずこの立場を代表する二,三の行政学者の所論についてみよう。
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