総説
衛生行政研究序説(その1)
橋本 正己
1
1国立公衆衛生院 衛生行政学部
pp.121-133
発行日 1961年3月15日
Published Date 1961/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202382
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I.序説
今日われわれが公衆衛生Public Healthと呼ぶところのものは,これを歴史的にみれば18世紀末葉以降,第1次の産業革命によつて招来された人間の健康に関係のある各種の社会問題が直接の契機となつて勃興したものであるといえる。すなわち,まずEngland & Wales等において産業革命の進行とともに,人口の都市集中,工業の勃興による都市環境の悪化,悪疫の流行,不良住宅,労働者階級とくに婦人,幼少年の苛酷な労働条件等が社会問題化し,18世紀末から19世紀初頭に至る主として熱烈なvolunteer1)たちに支えられた揺藍期を経て,おおむね19世紀の中葉以降,一方においては予防医学2)をはじめとする近代諸科学の進歩,他方においては社会問題に対処する行政制度の発達を媒介として確立した公衆衛生は,20世紀に入るに及んで,公衆衛生学として,また公衆衛生行政として,さらに総合的な公衆衛生活動として輝かしい発展をみるに至つたのである。
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