特集 成人病対策
日本における衛生行政研究小史(その3)
橋本 正己
1
1国立公衆衛生院衛生行政学部
pp.528-539
発行日 1961年9月15日
Published Date 1961/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202442
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5.第2次世界大戦後(昭和20年8月〜)
明治初期以来,太平洋戦争の終末に至るまでの日本における衛生行政研究の歩みを前項までに概観したのであるが,これらは本格的な衛生行政研究ないしは衛生行政学にとつては,いわばその前史ともいうべき段階といえよう。すなわち,この時期を通じて個々についてみると,後年の衛生行政研究の先駆的業績として高く評価されるべきものも稀ではないが,全般的にみると日本の衛生行政発足の後進性と社会的政治的環境の悪条件に災されて,衛生行政研究の本格的な確立と発展に至らなかつたといえる。このような見地からすると太平洋戦争の敗戦を契機とする社会的政治的条件の激変は,与えられたものとしての要素が大きかつたとはいえ,平和憲法の下に福祉国家の建設を掲げ,公衆衛生活動の発展にはきわめて好適な外的条件が具備されるに至つたのであり,このような背景の下に公衆衛生活動発展のひとつの側面として,衛生行政研究の気運が徐々にではあるが,しだいに動いてきたことは決して偶然ではない。以下に戦後における衛生行政研究の動きとその流れをそれぞれの時代の社会的背景を念願におきながら概観することとしよう。
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