特集 社会医学
地域社会の大きさと医療施設の関係—特に施設を利用する患者について
大谷 藤郎
1
1厚生省統計調査部
pp.621-626
発行日 1960年11月15日
Published Date 1960/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202339
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まえがき
市町村単位の地域社会を人口規模の大きさによつて類型化すると,医療施設および診療医師の分布密度は人口規模の大きい地域社会群ほど密度がたかくて,地域社会の人口規模の大きさと医療施設・診療医師の分布密度は平行する。地域社会の人口規模の大きさというのは包括的に都市性向を表現するものであり,また死亡率・乳児死亡率・住民の消費・所得水準ともきわめて規則的な逆相関あるいは相関関係を認めるのである。このことからわが国の現状では都市性向という基盤の上にたつて,医療施設・医師―死亡率・乳児死亡率―貧困の間に悪循環ともいうべき一定の関係があり,いかんなことながらこのようなゆがんだ諸相をもつ都市集中性が医療施設・診療医師の配置を規定する原則となつている。筆者1)は先にこれらの関係を統計的にあきらかにし,この原則を打破し,公共的社会的努力によつて地域住民のために真に無差別の医療施設・診療医師の分布がなされる必要があることを述べた。
ところでこのように医療施設・診療医師はあきらかに都市に偏在しているが,実際に施設を利用する患者の動きはどうなのか,国民の医療を考える場合に,受療する患者の実態こそ地域においてわれわれがもつとも知りたいことであり,知らねばならぬことであつた。そこで昭和34年6月17日に行なわれた厚生省患者調査2)の資料をもちいて地域における施設利用患者について以下の推計を行なつたので報告したい。
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