特集 社会医学
医療における配置買薬の役割—地域社会の大きさと配置買薬(ならびに薬局)の関係
大谷 藤郎
1
,
浅野 光雄
1
1厚生省統計調査部
pp.627-631
発行日 1961年11月15日
Published Date 1961/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202462
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I.まえがき
病院,診療所などが都市に集中しているのはあきらかな事実で,筆者1)2)はこの関係を地域社会の大きさ,すなわち6大都市,20万以上の市,10万〜20万の市,10万未満市町村というわけ方によつて,統計的にすでに明らかにした。この場合,診療機関のまばらな分布状態にある10万未満市町村は,過去の報告2)で述べたように必ずしも住民の疾病量が少ないわけではないから,診療機関の行なう医療の不足はなんらかの形で補なわれていると考えねばならぬ。医師,歯科医師の行なう処置以外に考えられるものとして,買薬(薬局,配置,その他),あんま,はり,きゆう,柔道整復術,電気治療,まじない,きとうなどがあり,そのほかには何もしない放置の状態がある。そして医師,歯科医師の行なう近代医療の恩恵に浴しないところの,いうなれば医療の周辺とも名づけるべきこれらの医療を行なつている部分は,社会医学の見地から究明を必要とし,改善のための施策を必要とする部分である。
このうち特に配置買薬は,越中富山の薬売りのように前もつて一般家庭に配置してあつた薬を使用し,一定期間後に―主として半年後に―配置期間中使つた分だけの代金を支払い,代わりに新しく薬を配置してもらうというわが国独特の医療システムで,外国でもその例をみない特殊なものである。
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