特集 高血圧の疫学
高血圧の要因(特に生活環境要因との関係)
高橋 英次
1
1東北大学
pp.146-151
発行日 1959年2月15日
Published Date 1959/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202102
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個体の血圧は条件をほぼ一定にしても測定毎にかなりの動揺を示すことが多いが,集団的には余り著しい動揺を示さないのが普通である。すでに報告されている世界各地の資料からその血圧水準を見ると,欧米諸国や日本等では成熟期に達した後も殊に40才前後から再び上昇している。しかるにセイロンや北満の住民では中年以後の血圧水準の上昇は見られず,さらに中国南部の苗族や東アフリカの原住民等では逆にこの年令層から寧ろ低下の傾向さえ示している1)。これらの地域的の血圧年令分布の相違は夫々の社会集団の生活環境因子による影響が大であると思われる。
日本の国内における地方的血圧水準の分布については,測定条件を同じくする報告資料が必ずしも揃つているわけではないが,ほぼ脳卒中死亡率殊に30〜59才の中年期脳卒中死亡率2)〜5)の分布に並行するものと見られる。即ち,地方的にもなお局部的に多少の違いはあるが,東北地方に高く南西地方に概して低い。第1図は多少の時代のずれはあるが,中国地方と東北地方との農村住民の血圧水準を比較したものであり,この辺の事情を物語つている。ただ北海道は例外で,中年期脳卒中死亡率においても全国平均並であるが,農民の血圧水準についても6)7)必ずしも高いとは言えない。
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