特集 高血圧の疫学
高血圧と家系の問題
宮尾 定信
1
,
袴田 八郎
1熊本大学体質医学研究所・臨床学研究部
pp.152-156
発行日 1959年2月15日
Published Date 1959/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202103
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I.緒言
高血圧(本態性高血圧)の研究上,本症の類型疾患として最も関係の深い疾患は,脳卒中であるが,脳卒中或は高血圧が遺伝すると云う考え方は古くからあつた。文献上1)ではForestus(1529)が初めで,その後1769年Morganiが脳卒中が血族中に多発する事を認め,本症が遺伝するものであると考えた。1876年にはDieulatoyによつて,脳卒中多発の10家系が報告されている。その後本症が遺伝性疾患である事を示唆する1つの現象として,多くの家系が報告されている。本邦に於ても近年に至り,高血圧の成因上に占める遺伝の問題が重視される様になり,多くの調査が発表されているが,本症の遺伝性を示唆するものとして,高血圧患者では,遺伝証明率が非常に高率な事である。第1表に近年の報告を掲げる。
本症を遺伝の観点から系統的に調査したのはWeitz9)が最初である。氏は82例の高血圧患者を調査した所,本症患者の両親或は片親が脳卒中或は心臓病で死亡している症例が76.8%あり,対照者の30.3%に比し著しく高率であつた。また高血圧者の同胞中約半数に高血圧脳卒中或は心臓病が認められ,その遺伝型式は単純な優性遺伝であると述べている。
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