特集 子供の衛生と人間形成
綜説
市町村における母子衞生の動き
浅野 一雄
1
1厚生省児童局母子衛生課
pp.154-160
発行日 1958年3月15日
Published Date 1958/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201943
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1.はしがき
従来,母子衛生活動は保健所における公衆衛生活動の重要部門として実施されているのであるが健康な母親が健康な子供を産み,そして丈夫に育てるという母子衛生の根本理念にたちかえつて考えてみる時,伝染病の予防方策の如く社会防衛的な緊急性にこそ欠けているが,国民保健の基盤をなしているという点に於いて極めて重要な課題であることは今更ここに詳しく述べるまでもないであろう。
従つて,真に母親と子供の幸福と福祉のためには更に一段と母子衛生施策の進展をはからなければならないが,これがためには妊娠中における母体の心身の変動,旺盛な子供の発育過程を通じて現在より以上に頻繁な観察と指導を加えなければならない。しかし,これは現在の行政機構とその人員をもつてしては言うべくして行い難く,又反面,色々な意味で家事に追われて多忙な母親がその大部分を占めている我が国の現状からもいかに子供のためとはいい乍ら,少くとも外観的には健康だと思われる状態(子供特に乳幼児に於いては病識がなく,又仮令あつたとしてもその表現が充分でなく,素人の目から正常と病態との差がつくことは非常に少い)に於いて再々保健所に通わせることも実態的には仲々困難である。
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