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公衆衞生の動き
pp.46-47
発行日 1952年9月10日
Published Date 1952/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200363
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結核新薬イソニコチン酸ヒドラジツドが突如厚生省から発売許可となつた。厚生省側の見解によれば外国の資料及び日本に於ける実験の中間報告によれば大体有効無害といえること,アメリカで発売が許可されたこと,製造が簡単なために密造品が市場にまでに現われていること,密輸入品が出まわつていることなどが今回の許可の理由となつている。しかし之に対してアメリカの学者が一応よいとのデーターを出しても,日本の学者の研究ではどのような結果が出るか不明であり,現に中間報告されている例をみてもその結果に相当ちがいがあるために学会を始め日本医師会でも強硬に厚生省側の否を称している。また参議員厚生委員会でも厚生省側の許可の動機に不純なものがあつたのではないかという理由から,厚生省側の説明を求めるとともに参考人を集めて問題の追求を行つている。このように討議されているイソニコチン酸ヒドラジツドが果して結核にそんなに有効であるか否かの最終結論が出るには未だ相等日数を要するであろうが,一部にはあまり有効ではないという意見,耐性が極端に増加するため使用方法を充分注意しなければならないという意見もあり,外国の例を見ても必ずしもその結果が一定していない。そのために厚生省の内部でも保険に於ける取扱いや結核予防法適用の可否が未だ未決定でこの点のみからみても此度の発売は完全に時期が早すぎたようであり,厚生省側の黒星であろう。
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