特集 公衆衛生と社会保障
綜説
老人福祉の諸問題—養老年金と養老施設
加藤 信太郎
1
1厚生省
pp.11-14
発行日 1958年1月15日
Published Date 1958/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201916
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
老人福祉の問題は近時とみに世人の関心を集めるようになつてきた。毎年9月15日の「としよりの日」を中心として,敬老会の催しが各地で持たれているし,さらに続々と府県や市町村の条例による「敬老年金」あるいは「慰老年金」が創設されつつある一方,中央においても政府は厚生省において年金委員を委嘱して老令年金(養老年金)を中心とする国民年金制度の創設準備を進めており,社会保障制度審議会に対して「国民年金制度の基本構想いかん」という諮問を行つた。かたわら,民間においては,従前からの養老施設のほかに,新しい試みとしての有料老人ホームが次第にその数を増しつつあるし,また,各地に老人クラブが結成を見つつあるという状況である。
このような動き,つまり世人の老人福祉の問題に対する関心の高まりを示す動きは,よく指摘されるように,主として下の二つの事柄にその原因を見出すことが出来る。すなわち,(1)第2次世界大戦によつてわが国の社会的・経済的条件に著しい変動が生じたが,これに伴つて老人の生活問題は甚だ深刻な様相を呈するに至つた。最近における国民生活の安定・向上は,ようやく取残された恵まれない階層としての老令者の問題に世人の眼を向けさせるようになつてきた。(2)さらに,人口の老令化という現象,いいかえるならば総人口中に老令人口の占める比率の増大という傾向に対して,多くの掘下げた研究が行われ,世人の関心を引くようになつてきたのである。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.