科学的看護への基礎ノート・5
老人看護をめぐる諸問題
杉村 春三
1,2
1慈愛園・老人ホーム
2熊本大学高看学院
pp.52-55
発行日 1971年8月1日
Published Date 1971/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661917761
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看護婦と老人患者
看護婦が職業的感覚で,人間一般が根源的な心理機制としてもっている「厭老」または「侮老」あるときには「拒老」の体験をはたしてどこまで調整できるか……それは看護の現場ではたいへん判定が困難なことのように思う。
看護婦が老人患者をどのように考え,どのような心理反応を老人患者に示すか……というのもある断面でみると看護婦個人の内的体験のように考えられるが,実は老人をどうみるかという一般的な老人観,いいかえると一定の社会文化の支持を受けている老人観に直結して,その影響を強く受けているものと考えることができると思う。すなわち現代的な老人観が,一人の看護婦がもっている老人観と共通の基礎をもっている一面に,鋭い関心をもたねばならぬと思う。Ralph Emeryはその著「老人の理解Understanding Old Age」(1967年版)の最終巻末の言葉としてきわめて切実な,迫真的なことを書いている。それは「彼らの現実はわれらの将来なり……Their present isour future」という短かい言葉である。
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