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特集 新医師臨床研修制度における精神科研修はどうあるべきか
精神科医養老孟司は生まれたのか―民間精神科病院の立場から新臨床研修制度への提言
An Opinion on Psychiatric Training for Postgraduate Doctors
犬尾 明文
1
Akifumi INUO
1
1いぬお病院
1Inuo Hospital
キーワード:
Psychiatric training
,
Private psychiatric hospital
,
Primary care
Keyword:
Psychiatric training
,
Private psychiatric hospital
,
Primary care
pp.1079-1082
発行日 2003年10月15日
Published Date 2003/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100907
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はじめに
解剖学者として有名な養老孟司先生が記された「からだの見方」(ちくま文庫,筑摩書房,1994)の中に,次のようなくだりがあります。「医学を学び始めてから,一方で私は,人のこころに大変興味を持つようになった。精神科の医師になろうと思ったくらいである。だから医学部を卒業してすぐに,精神科の大学院を受験した。この時は,たまたま大学院の志望者が多かったので,クジ引きで入学者を決定することになった。クジを引いたら,案の定クジにはずれたから,そこで考え直した末,解剖学を専攻することにした。つまり,医師としての私の経歴は,本人の予定では『こころ』から始まるはずだったのだが,クジに外れたために,死体つまり『身体』から始まることになった。その後は,ほとんどもっぱら身体のことを考えてきた。しかし,もともと興味があったのだから当然といえば当然だが,最近は少しずつ,『こころ』についても考えざるを得なくなった。」
養老孟司先生は精神医学を学びたいと思われたのにもかかわらず,クジ引きという当時らしい選考方法によりその思いを断念せざるを得なかったわけです。しかしもしも大学を卒業されたばかりの先生が,来年から始まる新研修医制度を利用して,精神科での短期研修を行うことができたとするなら,先生はどのような志を持ち,どのように研修期間を過ごされたのでしょうか。もしかすると先生は,この短い研修期間に精神医学のおもしろさを再認識され,改めて精神医学の門をたたかれたのかもしれません。とすると,解剖学者養老孟司は残念ながら生まれなかったかもしれませんが,また別にすばらしい精神科医が誕生していたのかもしれません。
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