特集 老人の保健・福祉
老人福祉施設の使命と問題点
磯 典理
1,2
1大手前女子短期大学
2元大阪市立弘済院付属病院
pp.559-563
発行日 1978年9月15日
Published Date 1978/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205673
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はじめに
老人問題,老人対策,老人福祉といえば,概念としては常に老年者を向こう側において対岸視し,行為としては強者が弱者を保護し,富者が貧者に金品を与え,収容施設において保護する,という救貧的,慈善的,隔離収容的で,福祉イコール経済行為ということに重点が置かれていた.つまり,全般的に生活保護が中心であった.しかし,高度経済成長とともに,行政は住民の福祉ニーズに迎合して盛んに福祉づくりを試みた.だが,高度経済成長はいつまでも続かず,政府の福祉元年(1973年)の政治スローガンは福祉2年を迎えることなく,"福祉見直し論"へと後退し,"与える福祉","ばらまき福祉"が反省され,国民行政依存性は人間の主体性保持へとやや変容し,地域住民も自分の老後は自分で守り,行政に任せるだけでなく自分達みんなで考えよう,という風潮が出始めてきた.
この考え方から,老人施設においても老人個人の自立性,主体性に注目して,保護面のみでなく,開発面の方向が模索されている.
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