特集 公衆衛生と社会保障
綜説
児童の福祉と衛生
若松 栄一
1
1厚生省母子衛生課
pp.5-10
発行日 1958年1月15日
Published Date 1958/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201915
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
児童の福祉と衛生の理念
現在の日本に於ける社会保障の構成として大きく三つの柱を建て得ると思う。一つは各種社会保険を以て構成される医療保障,各種年金及び諸給付の製度であり,これらは原則として拠出制相互扶助の精神に立脚している。二つは生活保護法を中核とする一連の社会福祉施策であり,これらは国民の最低生活を保障した憲法の規定に由来する国民の権利,国の義務を基盤とする無拠出制,公的扶助を原則とする行き方である。第三は公衆衛生の行き方であつて,この場合は一般大衆に対する無差別平等のサービスを建て前とし,予防的乃至間接的保障の推進をその内容としている。これら三つの系列の社会保障施策は,それぞれの分野に於て又その内容,対象により細分されて,カテゴリカルな援護又はサービスを行つている。なお労働関係の規制を行つている一連の労働施策並びに公費による義務教育制度等は更に広い意味の社会保障の分野を受け持つているが,これらについてはここでは問題の外におくこととする。
ところが児童に対しては,そのような一般的な保障の措置だけではどうしても物足りない。児童の特性に応じて,異つた角度からもつと濃度の高い,手厚い庇護が加えられることが必要である。
Copyright © 1958, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.