特集 生活改善運動の課題
新生活運動—特に社会教育の立場から
蒲生 芳郞
1
1文部省社会教育課
pp.1-4
発行日 1955年11月15日
Published Date 1955/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201610
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序論
鳩山内閣が新生活運動を提唱してから,最近中央における運動母体となる組織もようやく発足し,又全国的にこの種の運動が改めて検討され,更に活溌になりつつあるのであるが,この新生活運動とは,真に自分たちの生活を高め,幸福な暮しのできる家庭,社会,国家を築きあげるために,地域や職場や家庭で力を合わせて,生活一般を改善し因習を打破し,物質的にも精神的にも豊かな生活を打ちたてようとする,それらの活動を総称して広く新生活運動と考えてよい。これをもつと端的に云いあらわすならば,新生活運動とは,民衆全体が協力し合つて,組織的に,継続的に,生活の計画的合理化を行おうとする実践運動である。
このような運動が叫ばれ実践されるのには,必ずそのときの社会的必要性がある筈である。明治以降の我が国の新生活運動の歴史をふり返つてみると,明治17,18年の頃条約改正の必要から政府は欧化主義政策をとり,これに呼応して西郷従道,板垣退助等によつてつくられた風俗矯正会は,主として衣生活の改善を提唱し,婦女子の洋装,束髪を奨励した。これがいわゆる鹿鳴館時代である。しかしながら日清,日露の戦役後,国粋主義が拾頭し,反動として女学生の服装なども桃割,袴姿が流行した。
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