研究報告
青酸ガスに対する抵抗減弱者に関する研究
佐藤 徳郞
1
,
福山 富太郎
1
,
山田 美恵子
1
1国立公衆衛生院
pp.100-104
発行日 1954年6月15日
Published Date 1954/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201423
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検疫方面で青酸ガスくん蒸を実施するとき,くん蒸員の事故ばかりでなく,くん蒸完了後船室に入つている人達にも事故がおき死亡することがある。
青酸ガスの所謂恕限度は従来20ppmで,最近10ppmと考えられる動きが強い。この恕限度は8時間労働における安全限界と考えられているが,Patty(1949)の成績(1)によれば18〜36ppmでは数時間後に軽い症状が出,110〜135ppmでは1時間で生命に危険があり45〜54ppmでは30分〜1時間で相当の症状が現れるといつている。これらの成績から判断すると,恕限度と危険な症状の出るガス濃度との間のひらきが余りに少く,恕限度の10ppmという数字が,青酸ガスの洩れる環境に適応した人達にとつての安全な数字ではないかと考えられる。青酸ガスくん蒸完了後に船室を使用する人達は色々な人達があつて,主として青酸ガスに適応していない人々であるとみられ,なお種々の身体的な故障を持つ人をも包含するおそれがある。何か身体的な欠陥があつて青酸に対する抵抗が衰えていた場合には,普通の人であれば症状をおこさないような青酸量でも死亡する場合のあることが想定されるので,生物学的な実験からそれらの関係を明かにしようとした。
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