特集 筋再生と理学療法
サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)と筋力強化
阪井 康友
1
,
灰田 信英
1
Sakai Yasutomo
1
1帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科
pp.591-597
発行日 2009年7月15日
Published Date 2009/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101445
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はじめに
サルコペニア(sarcopenia:加齢性筋肉減弱症)は,加齢に伴い筋肉の量・強度・機能が低下する現象であり,高齢者においてはごく一般的な疾患である.近年,糖尿病,骨粗鬆症,免疫力の低下など,加齢に関連する望ましくない健康状態の根底にサルコペニアが存在することを示唆する証拠が多数集積されており,要介護状態に陥る要因の1つとも考えられている.
サルコペニアの発症メカニズムは複雑で,まだ完全には解明されていない.基本的には,低栄養,ホルモン濃度の変動,炎症性サイトカイン濃度の低下,支配運動ニューロンの変性,酸化ストレス,活動性の低下などの因子が作用し,筋肉を一定量に維持する制御機構が機能不全に陥った状態と考えられている.したがって,サルコペニアの予防や治療にあたっては,骨格筋タンパク質の合成を優位にし,筋肉量の維持や増加を促進することが原則となる.その対策としては,筋力トレーニング,アミノ酸の摂取,アミノ酸の合成を促進するビタミンやホルモンの投与が有用である.
本稿では,サルコペニアの病態ならびに治療法について概説する.
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