特集 乳幼兒衞生の焦点(I)
最近の小兒衞生問題
斎藤 潔
1
1国立公衆衞生院
pp.1-2
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201348
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乳兒死亡率はいつの世いかなる時代に於ても,その土地の文化の程度を示す指標である。過去数十年に亘り,世界の最低乳兒死亡率を誇つていたオセアニアの小国ニユージーランドは,近年その栄譽を遂に北欧の文化国スエーデンに譲つた。
欧米に於ける乳兒死亡率は,過去30年間に著しい改善を示し,アフリカ,南アメリカ及びアジヤの諸国をはるかに凌いで低率をつづけている。最近のわが国の乳兒死亡の低率は,欧米のそれに肉迫している。わが国の総死亡率の低下と平均余命の上昇とが,久しきに亘つて足ぶみしていたのは,わが国の乳幼見死亡率の改善が思わしくなかつたことが原因であつた。このように乳兒死亡率はその国の衞生状態を反映しているので,過去30年間のわが国の乳兒死亡率改善の跡をたどれば,最近のわが国の公衆衞生の歴史を繙くことになるであろう。
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