特集 乳幼兒衞生の焦点(I)
小兒結核と公衆衞生
福島 清
1,2
1都立小兒結核保養所
2慶大医学部
pp.3-5
発行日 1954年3月15日
Published Date 1954/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201349
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わが国の小児科の臨床において小児結核というと,髄膜炎,粟粒結核,肺門リンパ腺結核等が主として対象となり他の病型は余り相手にされなかつた様な嫌いがあつた。事実日常では上記の様な結核性疾患に遭遇する場合が多いのに反し,慢性肺結核症等は今迄小児療養所一つなかつた吾が国では比較的等閑視されたのも無理はないかも知れない。小児結核全般からみた場合,このような慢性型の結核は比較的少くて而も学令期以上の年令でないと稀れであるということも一つの原因であろう。由来学童の結核は全年令を通じ最もたちがよいと言われている。即ち治り易く死亡率を見てもこの時期が最低を示していることは外国でも日本でも同じである。所が一般の小児結核の関心が深まるにつれて,小児でも成人型のものが決して少いとは言えないことが次第にはつきりしつゝある感がある。又化学療法の急速な進歩によつて今迄の拱手傍観の態であつた幾多の結核性疾患が治るようになつた事は何んと言つても関心を深めざるを得ない様になつて来ている。
結核感染形式がその大部分が飛沫感染であり,開放性患者との接解のはげしい程うつり易いことも当然で,乳幼児の様ないわば結核処女地とも言うべきものに対しては患者と接することによつてたちまち感染が成立するわけである。外界との接触の少いこれら乳幼児の結核の感染源を追及すると大部分がその家庭内に結核患者が発見されることも幾多の調査が示している。
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