論説
このごろの小兒衞生行政
齊藤 潔
pp.250
発行日 1949年3月25日
Published Date 1949/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200434
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古くて新しく,世の移りかわりごとに改めて取り上げられる問題は小兒の福祉である。荒れくるう戰亂の中にあつては,後事を托しやがて戰う小兒の育成が強調せられ,戰やんで人々は平和をねがい,文化國家の建設を望む世ともなれば,やがて平和を愛好する小兒,文化人となるべき小兒の育成が論議される。ここに小兒の數が問題となることがある。人口問題で扱われる小兒である。この間にあつて小兒衞生は小兒の質を主として取扱うものであつて,數はその結果として現われるに過ぎない。健全なる質の小兒の育成が小兒衛生の目標である。また小兒の健康状態は民族の健康状態を反映するものであるから,乳兒の死亡率は文化の目標であるともいわれている。衞生の進歩は文化の向上と並行している。また小兒の衞生が考慮されずに一般衞生が始めらるべきでわないから,小兒衞生は凡ての衞生の出發點であり,根柢でもある。わが國の衞生行政面に於ては,從來小兒衞生は兎角困却されがちであり,寧ろ社會事業としての兒童保護の形でより多く取扱われきたが,兒童保護に於ての小兒の問題は,特殊の小兒のみが對象となつて,小兒が全體としてわ考えられていない。厚生省行政組織の大改革に際し,小兒衞生が衛生行政の組織の中に顔を出しかけたが,遂に兒童保護の色彩の中にうづもれたような姿となつた。僅かに保健所の中の1系として取扱われている。
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