特集 母の日のために
乳幼兒の精神衞生
竹田 俊雄
1
1愛育研究所
pp.14-18
発行日 1954年5月1日
Published Date 1954/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200599
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1.はしがき
精神衛生ということが近来しきりに強調されている.しかしこの言葉は1908年アメリカのクリフオード・ビーアズが用いたのが最初であつてその後およそ半世紀の間にその課題とするところは,精神病の治療や予防ということもりも,むしろ一般の人々の精神的な健康の保持と増進という分野に展開されて来た.
ところで人間の精神的な健康の基礎は,その乳幼兒期における環境への適応の如何によることが,発達心理学的な研究によつて次第に明らかになつて来た.乳兒や幼兒の時期にそのもつ欲求が正当に満きれるならば,人間のパースナリテイ(人格)は健全に発達するが,その環境に欲求の満足を不当に阻止するものがあれば,それはゆがめられた形で解決されるようになり,異常な行動を重ねて,好ましくないパースナリテイを形成するようになるのである.この意味で乳幼兒期の精神発達の正常な姿というものがどのようなものであるか,またそれを健やかに発達させるためには,親や周囲のものがどのような態度をもつて,こどもを育てて行くことが必要であるかを考察して見たい.
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