厚生行政の展望
新榮養行政の展望
岩田 昌一
pp.100-103
発行日 1949年8月15日
Published Date 1949/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200511
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戰後の社會思想の急激な轉換は,國家主義軍國主義を一擲して新らしい思想的世界を日本國民に示した。即ち基本的人権の尊嚴を原理として,個人の自由と機會の均等と個人の尊重を得るようにあらゆるもの政治,經濟,社會が組みかえられて來ている。デモクラシーとプラグマテイズムは我々日本人の社會生活に大きな影響を與え,その在り方を一變せんとしている。筆者はこれについて論述する限りではないが,少くとも現在の日本人にとつてなすべきことはアメリカンデモクラシーとプラグマテイズムに對する深い理解と實踐が,當面の日本人の成長のために緊要なことであると信ずる。かゝる思想が醫學と直結するとき,公衆衛生の思想と實踐が生れてくる。アメリカにおける公衆衞生の發達は當然その歴史的過程の一部として形成される筈のものであつたわけである。かくして日本においてもかゝる思想の理解の前進とともに公衆衞生は,漸時その緒につきつゝあり,公衆衞生行政の強化がはかられて來つゝある。公衆保健局の誕生,公衆衞生に關する諸法律の立法化,保健所の擴充強化等かはかられ,そのなすべき仕事は數えきれぬ位多いのでみる。公衆衞生の中又重要な分野を占める榮養も多分に洩れず,公衆衞生の一環として他の諸分野とともに大いに取上げられつゝある。元來榮養は社會生活に基礎的條件をもつ食生活に密接な關連を有する。
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