特集 高血圧と公衆衞生
公衆衞生からみた合衆国における循環器病の諸問題
田多井 吉之介
1
1国立公衆衞生院生理衞生学部
pp.3-7
発行日 1953年8月15日
Published Date 1953/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201248
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外因性の急性疾患は,おもに乳幼児や靑年を侵す伝染病を主体とするが,これらの予防と治療は,驚異的な進歩発展をとげている現状にある。これは,とくに近来その効果をあげつつある予防的公衆衞生対策および有効な諸抗生物質剤の発見とその速やかな臨床的応用によること言をまたない。したがつて,いわゆる先進諸国の衞生統計には,これらの影響が顕著にあらわれている。こころみに合衆国の出生時平均余命をしらべてみると,1900年には47才であつたのに,50年後の1951年には,男子で67才余,女子で71才余となつている。このように半世紀間に寿命が20才以上も延長した原因は,まつたくこの予防と治療における画期的発展によるものである。
しかしながら,この大きな成果のかげには,いたずらに喜んでばかりいられない新しく根強い傾向がひそんでいるのである。それは,人間の寿命の延長という現実から必然的にもたらされる老人性慢性病による長期間の無能力化である。その損失は測りがたいほど大きいのであつて,慢性病による負担は,個人的にも集団的にも,急性疾患からおこる死亡より遙かに大きな悲劇の源泉となりつつある。
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